2006年 05月 09日
無題 |
こんな記事を読みました。
2月24日、東京・有楽町マリオンで「国民参加の森林作り――ボランティア活動と森づくり」シンポジウムが開催された。西澤潤一さんはその基調講演で、もう化石燃料の利用はやめるべきだとし、最も期待できる石油の代替エネルギーとして水力の活用を強調した。また、森林が穏やかな気候をもたらし、水資源の確保に役立つことから、人間の生存を確かなものにしていくのは、緑と科学技術ではないか、と結んでいる。
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「人類を救う緑と科学技術」 西澤潤一さん
「国民参加の森林づくり」シンポ、基調講演
2006.03.22 朝日新聞(朝刊)
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西澤潤一(にしざわ・じゅんいち)
首都大学東京学長(電子通信工学)。東北大学学長などを経て
05年から現職。光ファイバーなどの発明で知られる。
文化勲章受章。79歳。
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工学の「工」の字には、こんな意味がある。上の横棒は自然、下の横棒は人と社会を表し、それを縦棒でつなぐ。つまり、自然を有効に利用することで、人間に幸せを与える。私は若いころから、このことを肝に銘じて研究を続けてきた。
約2千年前に水車、1千年前に風車が発明された。約250年前には3人の大発明により蒸気機関が完成し、人類は過酷な労働から解き放たれた。英国グラスゴー大学のウィリアム・トムソン教授は英米間に銅線を敷設して、高速通信の基礎を築いた。エジソンは電球の発明で、人類に夜の文化をもたらした。フォードは、自動車を大衆の道具とした。科学技術の発展とエネルギーの利用は、文化を向上させ、人口を急増させた。
近年、インターネット犯罪が多発し、地球環境の悪化が深刻となったのをみて、科学技術はけしからん、罪悪だという人もいる。しかし、それは科学の責任ではない。新たなものには弊害がつきものだ。倫理観を確率するなど、行きすぎを是正すればいい。
ただ、地球環境の悪化には、私も危機感を持っている。産業革命後、大気中のCO2濃度は指数関数的に増加していて、2200年には3%に達すると思われる。4%になると、動物は呼吸できなくなる。
もう化石燃料の利用はやめるべきだと思う。過去に放出されたCO2は、大気だけでなく、メタンガスの状態で海底に蓄積されていることも、最近分かってきた。しかし、これをくみ上げて使うことには賛成できない。CO2の循環を破り、取り返しのつかない事態を招く恐れがある。
最も期待できるのは水力だ。これを活用すれば、石油に匹敵するエネルギーを得ることができる。植林も大切だ。しかし木材は、濃度の濃い炭素には戻らない。CO2を減らすことには大きな期待は出来ないと思うが、緑は穏やかな気候をもたらし、水資源を確保し、動物と植物の共存共栄に役立つ。自然の安定的な維持装置として森林を増やしていく。それを、「工」の意味のように、有効利用していく。人間の生存を確かなものにしていくのは、緑と科学技術ではないか。
by kawauchiide
| 2006-05-09 19:27